甘い恋の始め方
「この真鯛は新鮮でおいしいですね」

理子に話しかけてくるのは目の前の気弱そうな男性。

「そうですね。さすがミシュランの3ツ星ですね」

別に愛想よくしているわけではないけれど、笑顔を張りつかせてしまう。

(久我副社長のせいで、ここにいる男たちが霞んでしまって、かえって可哀想になる)

久我副社長以外の男性たちに笑顔を見せてしまうのは、彼らが哀れのせいだと理子は考える。

もはや理子を除いて5人の女性は、久我副社長にしか興味がないのをあからさまにしている。

男性たちもそれがわかっているのだろう。ルックスで勝てるなんて思っていないらしく、あとは年収しか太刀打ちできないだろう。いや、年収だって久我副社長は彼らに負けていないに違いない。

理子にしても、このメンバーの中では久我副社長が一番。

ステキな人だと思っていたのだから。

しかし、同じ会社の者が同じ婚活パーティーに出ていると知ったら恥ずかしい思いをして、相手にされないに決まっている。

それに社内の噂……同じ会社の女性は相手にされないという噂も気になる。


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