甘い恋の始め方
「明日まで待てずに来てしまいました」

(明日まで待てずに……?)

「やはり泣いていたんですね」

理子に2歩で近づいた悠也は、冷たい指先を腫れた目蓋に滑らした。

その間悠也の顔を見入ってしまった理子だが、瞳が合うと俯いた。

「……申し訳なくて……」

「部屋に入れてくれないのですか?」

「……本当に……話を……?」

「そうでなければ、のこのことやっては来ません」

理子は玄関の鍵を開けて、悠也を部屋に入れた。

悠也は会社からそのまま来たのか、先ほどのスーツ姿。

そんな悠也に対して理子はコートを脱いだらスウェット姿。今日のような日にみっともない姿を見せたくなくて、コートを脱げないでいた。

「そ……そこに座っていてください。今、コーヒーを淹れます」

「いや。コーヒーよりも話をしましょう。座ってください」

悠也の言うとおりに、理子はイスに浅く腰掛けた。

「……あの……さっきの話、どこまで……」

「彼が耳が腐りそうな暴言を吐いているところから。あの男は誰なんですか? それともうひとりの名前を言っていましたね?」

どうやって話せばいいのか……理子の頭の中は混乱していた。

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