甘い恋の始め方
翔の話を聞かれてしまい恥ずかしい。しかし、これですべて話せれば気が楽になるのではないかと思った。

悠也が静かに聞いてくれるので、少しずつ頭の中で整理をする。

「彼は……元婚約者です。2年前に彼の浮気で婚約解消しました。浮気をされて男性が信じられなくなって、でも30歳が近づいてくるとまだ結婚していない友人たちもしだいに結婚して……正直、私は焦っていました。人それぞれ人生は違うのに、最近になって焦ってきたんです」

悠也は黙って聞いている。

「愛は信じられなくて、結婚で安定を求めるだけの打算的で嫌な女なんです。悠也さんと出会った翌日に、元婚約者の後輩に偶然会ってから数回会ってしまいました。私は最低な女です。だから……どうか今までのことはなかったことにしてください。副社長とはほとんど会うことはありませんが、ばったり会ったら無視してください」

理子は小さく頭を下げた。

「……理子さん、本気で言っているんですか? 今までのことをなかったことにしろと? 社で会っても無視をしろと?」

「本気です。私を愛しているわけではないのですから簡単なことだと思います」

久我副社長はきっちりと物事の白黒をつける性格だから、理由を聞いてスッキリしたかったのだと理子は思った。

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