甘い恋の始め方
(叔母様は久我副社長にとって、両親の代わりで大事な人なんだわ。だから結婚を急いでいる)

「明日、紹介したら叔母はさっそくウエディングドレスのデザインを始めるだろうな」

その叔母の姿を思い出したのか、悠也はクスッと笑みを漏らす。

「ウエディングドレスのデザインって、叔母様はデザイナーなんですか?」

「ああ。けっこう有名だから理子も知っているかな。Yasukoって言うデザイナー」

「ええっ! yasukoって、あの高級ブランドのっ!?」

海外のブランドには疎い理子だが、日本でyasukoブランドは有名だ。彼女がデザインしたスーツなどは一桁違う。もちろんウエディングドレスも目が飛び出るくらい高いだろう。

「知っていたんだ。彼女が叔母なんだ。俺に見合いを勧めた頃から、ウエディングドレスを作りたくてうずうずしているよ」

以前、理子は彼女を特集した番組を見たことがある。

(美しい人だったけど、結婚をしないで独身を通したのには理由があったのね……)

ひとりで両親を亡くした男の子を育てるのは大変だっただろう。

理子の脳裏に途方に暮れた男の子が浮かび、胸が締め付けられるように痛くなった。

「どうした?」


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