甘い恋の始め方
「えっ? あ……いいえ」

「それよりコートを着て暑くないかい?」

「は、はい!……いいえ、本当は暑いです。でも下はスウェットだから恥ずかしくて脱げなかったんです」

「正直でけっこう。恥ずかしがり屋の理子も好きだな」

「悠也さん……」

理子はうっとりと悠也を見上げる。

昼間は地獄を歩いているような気分だったのに、今はなんて幸せなんだろう。

「そんな目をしたら帰れなくなる」

悠也は理子の顎を持ち上げ、唇を啄むようにして奪う。

「んっ……」

ちゅっちゅっと何度も上唇と下唇にキスをしてから、舌が歯列を割って口腔内にするりと入り込む。

深いキスのあと、悠也は理子からゆっくり離れた。

「また明日……もう今日か。10時に迎えに来る。それからご両親が揃う時間を確認してくれないかな。あとご両親への手土産を考えてほしい。和菓子かケーキか……他に何かあったら言ってほしい。好きなものを贈りたいんだ」

「和菓子でケーキでもなんでも大丈夫ですから適当でいいです」

「いや、突然だから印象を良くしたいんだ」

そこまで考えてくれる悠也にほっこりした気分になる。


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