甘い恋の始め方
2年前に婚約解消してから母は「良い相手はいないの?」「早く見つけなさいね」と顔を見るたびに理子に言っていたが、心の中では諦めモードだった。

だから「紹介したい人がいる」と言うと心臓が止まるほど驚いたのだ。

衝撃がしだいに治まってくると母は「胸を張って紹介できる人なの? 変な人を連れてこないでしょうね?」と疑う始末。

具合が悪くなるのは困るので理子は「とても素敵な人だから安心して」と言った。

これから理子たちが実家に到着するまでの時間、母は気を揉んで待っていること間違いなしだ。

電話が終わると、再びクローゼットの前に立ち洋服を選び始めた。

(彼の横に立ってもおかしくないと思われるようにしたい)

ファッションデザイナーだから、洋服を選ぶのも大変だ。

理子は数着をベッドの上に広げて悩むと、オフホワイトのワンピースとノーカラーの途中で切り替えが入ったジャケットに決めた。

大きめのアクセサリーをつければ顔が明るく見えるだろう。

髪をふんわりとエアリー感が出るようにブローしたが、やはり浩太がやってくれたような風になるには何かが足りなかった。

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