甘い恋の始め方
「推測だけど……もしかして、その後輩の美容師にやってもらったとか?」

(するどい……)

「実は……そうなんです」

正直に話したが、嫌悪されてしまうかもしれない不安な心を隠す。

「やっぱり……妬けるな」

「えっ?」

「美容師にしろ、どんな男でも理子の髪に触れられれば嫉妬する」

悠也の本心なのか。そんな言葉を言ってもらえると、愛されているのではないかと勘違いしてしまいそうだ。

今の関係、愛ではなく好きの関係。

(もっと……もっと好きになってほしい……)

「悠也さんって恥ずかしいことを言っちゃう人なんですね」

照れくさくて理子は悠也から視線を外すと、バッグの持ち手をくねくねといじる。

「そうかな」

「そうです。あ、でも今度からは女性の美容師さんにします」

今までの行きつけのヘアサロンでも美容師は男性だ。

おもむろに悠也は理子の方に上半身を近づけた。

「君は素直なんなんだな。もっと嫉妬させようなんて駆け引きは出来ないんだね」

端正な悠也の顔がほころび、後頭部に手が回り彼の方へ引き寄せられる。

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