甘い恋の始め方
「29歳にもなって、恋愛ベタとか思って――」

「いや、そのままでいてほしい」

悠也の顔が傾き、理子の唇が塞がれた。

顔が近づいただけでドキドキ鳴り始めた心臓は、キスされ悠也に聞こえそうなほど心臓が暴れ出す。

こんな風にからかうように会話を楽しみ、キスしてくれた人はいない。

悠也と出会えたきっかけを作ってくれたあずさを抱きしめて、感謝したいくらいだ。

******

手土産は途中の老舗和菓子店の羊羹にした。

悠也によれば、康子は羊羹に目がない。

その羊羹は理子の両親も大好きだ。

倹約家の母が高い羊羹を買ってくることは滅多にないが。

それを聞いた悠也は、理子の実家にも同じものを買った。

花屋によりピンクユリとトルコキキョウの大きな花束を作ってもらった。

土産を買い終えたふたりは康子の家へ向かった。


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