甘い恋の始め方
理子は矢継ぎ早に康子から質問されている。

その質問は悪意のないものばかりで、理子はうんざりするどころか笑みを浮かべながら丁寧に答えていた。

悠也の方が「もうそれくらいでいいでしょう?」と呆れている。

「本当に良い娘さんで、安心したわ。肩の荷が下りて気分が良いわ」

歯に衣を着せぬ康子の人柄が理子も好きになった。

真っ先に自分のことは「康子さん」と呼んでほしいと言った。

悠也と康子の関係は親子以上のものを感じる。お互いが慈しみあうような。

目の前に座っている康子さんが1年の命だとはとても思えない。精気に満ち溢れているように見えるから。

「お昼を用意させているから食べて行ってね。あ! 理子ちゃん、店に行ってウエディングドレスを見てみない? もちろん私が責任をもってデザインさせてもらうのだけど、どんな感じが好みなのか知りたいから」

「はい。ぜひ」

ウエディングドレスは憧れ。自分のドレスをウエディングドレスの第一人者である康子に作ってもらえるのは幸運だ。

「先生」

リビングにいる康子をアシスタントの女性が呼びに来た。

「今行くわ。ちょっと失礼するわね」

アシスタントの女性に声をかけてから、立ちながら康子は理子に詫びる。


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