甘い恋の始め方
「だから理子ちゃんは悠也にとって特別なのね。大学のときに付き合った相手と結婚まで考えていたのに、別れてから真剣に付き合っていないようだったから」

顔には出さないよう喜んでいた理子は、やはり顔に出さないよう驚いた。

(大学の頃に結婚まで考えて付き合っていた女性……)

その女性は悠也にとって特別な女性だったのだ。そして今もそうなのではないかと……。

「あ、それからね? 私が癌だと言うことは聞いているわよね?」

「はい……体調はいかがですか?」

そのことになかなか触れられず、機会を見つけて声をかけたかった。

えんぴつを動かす手を止めて、康子は自宅へつながるドアをちらりと見る。

「体調は……大丈夫よ。私、悠也に嘘をついてしまったの」

「嘘……ですか?」

「ええ。医者から宣告されたのは余命1年なんだけど、焦るあまり余命半年って言ってしまったの」

(悠也さんはこの嘘に焦らされた?)

「私からちゃんと謝るから理子ちゃんはなにも言わないでね」

少し後悔したような表情に理子は思いっきり頷いていた。

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