甘い恋の始め方
足立区にある理子の実家に到着した。

今は亡くなっているが、父方の両親と一緒に住んでいた家は古いが大きい。庭も家庭菜園が出来るくらい広く、昔地主だったことがうかがえる。

今朝理子が電話した後からずっと気を揉んでいたのだろう。

母が玄関を飛び出さんばかりに出てきた。悠也を見ると、心配そうな表情がみるみるうちに満面の笑みになる。

母に急かされるようにして家の中へ入ると、所在なさげな父がコーヒーの入ったマグカップを持ってうろうろしていた。

******

挨拶を済ませ、悠也は理子の両親に結婚の了承をもらった。

前もって理子は悠也にこの結婚が婚活パーティーであったこと言わないでほしいと言ってあった。

そのような事情の結婚ならば両親は許さないだろうと理子は考えたのだ。

1年ほど付き合い結婚を決めたことにし、両親にもそう話した。

その場にいた愛美ひとりが腑に落ちない顔を浮かべていたのを理子は見逃さず、あとでなにか言われそうだと予想する。

母はイケメンの悠也に早くも嬉しそうで愛想が良くて理子もホッとした。

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