甘い恋の始め方
******

案内されて婚活パーティーの部屋に入った途端、悠也は引き返したくなった。

少し遅れてしまったせいで、一斉に視線を向けられ居心地が悪い。

「こちらがお席です」

一番端の席で良かったとホッとして座った。

落ち着くと、あらためて部屋の中に視線を向ける。

(ずらっと並ぶ男女か……)

きっちりしすぎて苦手だ。こういう並びは会議のときに他ならない。

(婚活パーティーより見合いの方がましかもしれないな)

品定めをしている男女の視線は、ある意味肉食系の獣。
自分も相手を探してきているのだが、あからさまな視線を受けると進んで女性と話をしたくなくなる。

食事が始まり、近くの女性たちと話をしながら料理を口に運んでいた悠也は、ふと窓側の一番端の女性に目を留めた。

6人中5人が自分に話しかけてくるのに、彼女は目の前の男性と話をしているだけだ。

参加者の中でも容姿端麗の彼女。

歓談し笑っているが、心から笑っているように見えない。

(彼女も俺と同じように気の進まない、誰かにお膳立てされて参加しているのか? それともプライドが高い女なのか?)

悠也は目の前のふくよかな女性と話をしながらも、窓際の一番端の女性が気になった。

< 19 / 257 >

この作品をシェア

pagetop