甘い恋の始め方
「どうなった? 副社長から連絡あった?」

考えてみればいろいろあった週末だった。自分の人生ががらりと変わった週末でもある。

うん。と返事をしたところで、理子たちの後ろにエレベーターを待つサラリーマンやOLが並んでいることに気づき、短い返事で終わらせる。

エレベーターに乗り込み、ひとりふたりと減りながら理子たちのフロアー7階に到着。

「理子、顔色悪いけど大丈夫?」

エレベーターの中で加奈は理子の顔を見ていたようで、立ち止まり聞いてくる。

「土曜日の夕方から風邪を引いて寝込んでたの」

「でもまだ良くなっていないみたいよ? 酷い声だし」

「熱は微熱程度だけど、身体がだるくて……会議があるから休むわけにいかなくて」

「もうっ、大丈夫なの? 病院は? 診療所に行ってきた方が良いわよ」

「うん。そのつもり……少し席外すね」

「課長には言っておくから、このまま行きなさいよ」

せっかく2課のドア前まで来たのだが、加奈に言われて回れ右。

エレベーターにもう一度乗せられていた。

診療所の医師に診てもらった結果、喉からの風邪だった。

金曜日の夜、玄関前で翔と話をしていたのがいけなかったのかもしれない。

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