甘い恋の始め方
パーティー主催者のスタッフの女性が、次の段取りに移る説明をしていた。

(ひとり5分か、あと1時間もすれば終わるか)

悠也はスーツの上着の袖を少しずらして時間を見る。

現在の時刻は20時。お開きは21時頃かと考える。

(おそらく明日の昼、康子さんから電話が入るだろう)

気に入った女性がいたらその日にお持ち帰りしなさいと、立派な大人が言わないセリフを康子は言う。

結婚には身体の相性も必要だと考えているからだ。

話しを聞く悠也の方が、立派な大人なのに思春期の学生の気分になる。

今日もお持ち帰りを期待している康子。

万が一、悠也に気に入った女性が見つかり、お持ち帰りをした場合を想定して、今日康子は電話をかけてこないが、明日好奇心を抑えられずかけてくるだろう。

(今回も康子さんの期待にそえられそうにないな……)

隣の部屋に場は移され、イスだけが対面に置かれたものが6セット。

各自、メモを渡される。

「では、お時間は5分です。有意義なお時間をお過ごしくださいませ」

スタッフの合図で男女が話しはじめた。

5分と言う時間は短い。

いろいろなことを話そうと、両方が早口になる場合もあれば、片方だけ一方的に話すパターンもある。どっちかが気乗りしない相手だと、後者だろう。

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