甘い恋の始め方
******

数日後、理子は数週間ぶりに加奈とあずさでいつものショットバーで会っていた。

悠也との婚約を知らせると、あずさは驚いたものの「お似合いよ」と言って祝福してくれた。

「で、年下くんの方とは決着がついたのね?」

あずさが小さな三角形に切られたチーズをつまみながら聞いてくる。

「年下くん……彼には彼女がいたの。人から聞いた話なんだけど。私はからかわれていただけってわけ」

(翔が意地悪をしてそう言ったのではないと思う。現にあれから連絡がないし)

理子もチーズをかじってからソルティドッグを飲む。

「三十路前の婚約、将来約束された生活。念願かなったし、理子は誰よりも幸せになったのね。おめでとう。ね、もう一度、乾杯しよう」

あずさが加奈と理子にグラスを持つように身振りをする。

あと1週間でクリスマス・イブ。

クリスマス・イブは理子の誕生日だ。記念すべき三十路へ突入の日。

(あずさの言うとおり、すべてが思うままに進んでいる。でも、無性に切なくなるのはなんなんだろう……)

< 221 / 257 >

この作品をシェア

pagetop