甘い恋の始め方
25分で設楽との仕事を終わらせ、化粧室へ急ぐ。身だしなみチェックのためだ。

社長の用は悠也のことに違いない。何を言われるのか心配しながら社長室へ向かった。

14階のフロアーでエレベーターを降りると、受付嬢がさっと席を立ち理子を迎える。

「社長に呼ばれたのですが」

受付嬢は理子が首からぶら下げている社員証に視線を走らせる。

「はい。どうぞご案内いたします」

悠也は副社長室にいるのだろうかと考えながら、幾何学模様のワンピースに7センチはあるハイヒールを履いた受付嬢の後ろを付いて行く。

社長室に案内されると、篠原は席を外していた。受付嬢にすぐに戻るので待っていてくださいと言われ、勧められたソファに座る。

ソファに腰を下ろしたとき、別のドアから篠原が書類を手にして入ってきて、慌てて立ち上がる。

「あ、どうぞ掛けてください」

そう言いながら、書類を執務机の上に置き、理子の対面に座った。

ネクタイを外し、冬なのにワイシャツの袖もまくっている社長は若々しく見える。

(たしか、悠也さんより少し上のはず)



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