甘い恋の始め方
「落ち着いた?」

車を停めてから悠也はぼんやり遠くを見ている理子に声をかけた。

その声は気遣うような優しさが含まれている。

「……悠也さん、本当に考えてほしいんです。結婚のこと」

悠也は車内灯を点けた。

「どうして考えてほしいのか話してくれないか?」

俯くふんわりした髪を撫でながら、悠也は理子を見つめている。

「……この先、夫婦として生活できるか心配なんです」

これは本音だ。悠也に愛されない、苦しい思いを重ね続けていたら、精神がボロボロになってしまうかもしれない。

「やっぱりマリッジブルーのようだね。結婚が決まるとそういうことが気になるらしい」

髪に触れていた悠也の手は理子の顎に移動し、そっと持ち上げる。

理子の瞳は潤んでいた。

「理子……」

(なぜそれほど不安なのだろうか……)

悠也は理子の目尻に親指を滑らせ、涙をゆっくり拭う。

涙を拭ってやりながら、悠也は胸がツキッと痛むのを感じた。

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