甘い恋の始め方

気づく想い

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理子は翌日から24日まで有給休暇を取り、ひとりで福島県の温泉地へ出かけた。

いわば気持の整理をつける旅行。

急ぎの仕事は年末まで入っていない。

スマホの電源を切り、タブレットもノートパソコンも持っていかない。旅のお供は5冊の恋愛小説。あとは温泉と睡眠で2泊3日を過ごす。

悠也には会わないと言ってあったので、小旅行をすることを言わない。

そのせいで、悠也の仕事が手につかない状態にあることを理子は知らなかった。

25日まで会わないと言われ、クリスマス・イブに予約していたフレンチレストランはキャンセルした。

恋人たちのイベント、それさえもなしだ。

昨日の様子が気になりかけてみれば、理子のスマホは朝から通じず、彼女の内線をかけると、同僚の加奈に突然有給休暇を取り24日まで旅行に出たと言われる。その声は全く知らない相手でも、電話越しにわかるくらい不機嫌そのものだった。

(同僚の彼女はなにか知っているのだろうか?)

旅行に出たと言われ、悠也は驚いた。
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