甘い恋の始め方
「こらこら、のろけるんじゃないわよ。ま、副社長も友人たちにのろけているでしょうけど」

「悠也さんがのろける? 本当に?」

「いつも理子といるときはデレッとしているじゃない。用もないのに2課に頻繁に来るしね」

そのせいで加奈は悠也と冗談を言い合えるほどになっていた。

クリスマスの翌日、理子は篠原社長に謝られた。

意地悪で言ったわけではなく、ふたりに幸せな結婚をしてほしかったからだと説明してくれた。

今では夫婦同士食事に行くほど気軽な関係だ。

子供が出来るまでは働くつもりでいる。

上海企業のWEBデザインは好評を得て、設楽はこの春異例の昇進で主任になる。理子にも係長昇進の話が来たが、いつかは辞める身なので昇進の話は断ったのだ。




加奈とあずさが出ていき、新婦控室には理子ひとりきりになった。

この3ヶ月はとても忙しかった。

理子の住まいは心配だと諭され、悠也のマンションへ越してきた。短い同棲期間は甘く満ち足りた毎日で幸せだったが、これからの生活はもっと幸せになるはず。



「花嫁様、お時間でございます」

式場スタッフの女性に声をかけられる。

理子はスタッフに付き添われ、悠也の待つ教会へゆっくり向かった。


自分たちをめぐり合わせてくれた神様に感謝する。



祭壇の前で白のタキシードに身を包んだ悠也が理子を待っていた。

目と目が合った瞬間、悠也に微笑みかけられ緊張していたのが嘘のように心が落ち着いた。


幸せな未来は自分たちが作るもの。


――理子の恋は突然やってきた。
そして、育ててくれた叔母のために結婚相手を探していた悠也にも本物の恋が。


ふたりの恋はくちづけから始まった。


END

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