甘い恋の始め方
「だって、そういうパーティーって、子羊を狙うオオカミが目をギラギラさせているイメージじゃない? 今まで結婚出来なかったのには事情があるのでしょうけど、本性を隠して参加、そんなイメージだもの。いい? お金も必要だけど、この相手と自分がセックスできるかを想像するのよ。生理的に受け付けない相手とは時間の無駄だから当たり障りのない話をして、さっさと次へ行くのよ」

「妥協も必要だと思うけど……幸せな結婚生活を送るためには、容姿よりお金よ。それにセックスは子作りのためだけでいいと――」

「は? あんたいったい何歳なのよ! セックスは気持ちよくなるために決まっているじゃない。自己解放、彼とのコミュニケーション、高まっていく快感。イッたときの気持ちよさ。もしかして理子、イッたことないの?」

「加奈、声が大きいっ」

この部屋にいるのは女性ばかりではない。

辺りを見回すと、近くにいる社員たちはパソコンに集中しているよう。

聞かれていなくて良かったと、理子はホッと肩を撫で下ろす。

「変なこと言わないでよ」

「へたくそな男とばかり付き合ったんだね」

「そうなのかな……」

「で、良い子ちゃんの理子は感じていたフリをしていたんだ」

「ちょっと! もうこの話は終わりっ! 行かなきゃ」

チークのコンパクトを加奈に返して、デスクの周りを整理すると理子は立ち上がる。

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