甘い恋の始め方
今までの彼氏でさえ、最初の人は1年。

それからだんだんと間隔は狭まってきたが、こんなに短い時間でことに至る……なんてことはなかった。

(彼はそういう関係も慣れているのかもしれない。社内での噂も絶えないし……私のように彼に惹かれ、寝てしまうことなんて食事をするのと同じくらいの数があるのかも……)

「なにを考えているんですか?」

こそこそとブラジャーとショーツを身につけ、ワンピースを着るとぼんやりしてしまった。

そこへ悠也が聞いてくる。

「な、なんでもありません」

(29歳なんだから、この状態もうまく切り抜けられるはず。にっこり笑ってさようならを言えば、彼はホッとするはず)

一度寝たからと言って、付き合いを迫るような女ではないと思ってほしい。

そんな女を男は嫌うとなにか雑誌に載っていたのを思い出す。

いつかは会社でばったり会ってしまうかもしれないが、その時はにっこり笑って「お久しぶりです」と言って流したい。

「俺と寝たこと、後悔していますか?」

「いいえ。後悔していません」

それだけははっきり知っておいてもらいたかった。

理子はきっぱり言うと、避けてしまったストッキングをバッグの中に丸めて入れヒールに足を通す。



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