甘い恋の始め方
理子のＷＥＢデザイン２課で働くのは課長、主任を含め６人。

ＷＥＢデザイン２課は小売業者や個人相手。

ＷＥＢデザイン１課は大規模な商業デザインを請け負っている。

大規模なデザインを扱っている１課ならば久我副社長に会う機会もあるかもしれないが、個人的な仕事が多い２課では会うことはないだろう。

１度だけ会議であったのは１課の手が空いておらず大手ショッピングモールのＷＥＢサイトを２課が任せられたときだけ。

会社の入っているビルは複合商業施設で７階から１４階のフロアーを占めているが、理子は７階。

悠也のような取締役は１４階だ。

（今まで片手で数えられるくらいしか廊下で会ったことがないんだから、この先もばったり出会う確率は１％もないはず。もっと気持ちを楽にしなきゃ）

ひとりだけの時間は仕事がはかどる。

「これでよしっと！　あとは課長に確認してもらえば私の手を離れるね」

顧客はカラフルでポップなデザインを希望していた。

今、画面にあるのは心が弾みそうなビタミンカラーを使ったデザインだ。

出来栄えに満足して、まだ食べ終わっていなかった残り一口のベーグルを口の中へ放り込んだとき、ドアが開いて加奈が入ってきた。


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