甘い恋の始め方
「そうなの。不思議でしょ? だから、女性たちは彼に集中し他の男性は面白くない……で、カップルが誕生しなかったの。あずさが落ち込んでたわ」

もともと理子の大学時代の友人だったあずさは何かのきっかけで加奈を紹介し意気投合。

彼女たちは今も食事をしたり飲みに行ったりと仲がいい。もちろん理子を中心に。

「かわいそ~ あずさ、主任になったばかりでしょ?」

理子は上司に叱られるあずさを想像してしまい、ため息を漏らす。

「イケメン好きの理子もその男性が良かったの?」

イケメン好きのせいで、ろくでもない男に振られるはめになるのだ。

「……そう。だけど、彼は誰も名前を書かなかったみたい」

「ふ~ん。でもさ、課長の言うとおり、なにかあったんじゃない?」

加奈の勘ぐりに理子は笑う。

「課長の言うこと、真に受けるの?」

「でもなんかあったでしょ?」

しつこい加奈。

「ねえ、ねえ、正直に白状しなさい」

「なにもないよ」

あきらめが悪い加奈はまだ聞いてくる。

「ほんと~? なんかおかしいんだけどな~ なんかあったんじゃない?」

「もうっ、1回セックスしただけで変わるわけないでしょ!? あっ!」

「やっぱり!」

加奈の言葉に乗せられてポロッと口にしてしまった理子の右手が口元に行く。周りに人がいなくて幸いだった。

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