甘い恋の始め方
「でも驚いたわ! 理子らしくないじゃない。会ったばかりの人と寝ちゃうなんて」

「それがね……婚活パーティーの、そのハイステータスなイケメンが、久我副社長だったの」

「えっ!?」

聞き間違えだったのかと、加奈がじっと理子を見つめる。

「今なんて言った?」

まだ飲み込めないらしい。

それはそうだろう。わが社の独身、モテ男で女性ならばより取り見取りの久我副社長が婚活パーティーに出るはずがないと、頭が否定しているのだから。

理子は周りに聞かれないように、辺りをぐるっと見回してから声のトーンを落としてもう一度言う。

「久我副社長」

「は~~あぁぁ?」

なんとも間抜けな顔をした加奈を見て、理子は吹き出した。

「わが社の?」

もう一度念を押すように聞いてくる。

目の前のガパオランチは冷めかけてきている。

「そう」

理子は目玉焼きにスプーンを入れながら返事をした。

「ちょ、ちょっと待って! 頭の中、整理できないわっ」

理子はそんな加奈をほったらかしにして食べ始めた。


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