甘い恋の始め方
悠也は一瞬間をおいてから、タクシーの運転手に支払って下りた。

5階建てのワンルームマンションはキッチン、トイレ、バスルームが独立しているのが気に入っている。

部屋は10畳、壁に沿ってシングルベッドを置いている。

1階の廊下を歩きながら、部屋は片付いていただろうかと考える。

昨日、悠也の電話を待っていたら落ち着かなくなり、部屋の中を片付けていたばかりだと思い出した。

鍵を開けて「どうぞ」と悠也を促し2人掛けのテーブルのイスを勧める。

「今、コーヒー淹れますね」

理子は小さなキッチンに入り、パーコレータにコーヒーの粉と水をセットした。

「心配ですね」

悠也が眉根を寄せている。

「心配って?」

「1階は空き巣に狙われやすい」

「そうですね。ここを借りたとき、この部屋しか空いていなくて。でもここに2年間住んでいるけど、危ない目にあったことはないから大丈夫です」

理子はにっこり笑ったが、悠也はまだ納得がいかない顔を浮かべていた。

コーヒーの香ばしい香りが漂ってきた。

理子はマグカップを2個用意して淹れると、コーヒークリームとお砂糖を用意して悠也の前に置いた。

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