甘い恋の始め方
「浩太君、結婚を考えている人がいるの。だから、もう浩太君と会わない」

「言ったはずです。彼氏がいてもかまわないって。そいつより俺の方を好きにさせてみせます」

「勝手なこと言わないで。浩太君は恋人として見れない」

「理子さん、俺がそいつに宣戦布告します!」

あっけにとられていると、浩太は理子のスマホを素早く取り上げる。

「浩太君っ! 返して!」

理子は中腰になって手を伸ばしスマホを取り返そうとした。

「返しなさい」

「だめです! 俺がかけます!」

「浩太君っ!」

浩太が電源を入れようとしている。

理子は慌てて乱暴にスマホを取り上げたが――

手が滑りスマホは生グレのグラスにあたり、テーブルの上に落ちる。

落ちたスマホの上にグラスが倒れ、目も当てられない信じられない状態になった。

「……」

理子は濡れたスマホに絶句だ。

「うわっ! このスマホ、防水ですか?」

浩太が急いで理子の濡れたスマホをおしぼりで拭く。

「返して!」

理子は浩太からひったくるようにスマホを取ると、財布から一万円を出してテーブルに置く。

「さようなら」

理子は呆気にとられる浩太に冷たく言うと居酒屋を出た。

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