甘い恋の始め方
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悠也は長い会議で疲れた頭をぐるっと回した。

会議は軽食を挟んで20時過ぎまでかかった。

会議から解放された悠也は白金台に住んでいる康子に会いに行く予定だ。

急な会議が入らなかったら康子に会ってから、理子に会いに行っただろう。

理子と一緒に過ごすために上海から戻ってきたのだ。

悠也は余命が半年と宣告された康子のために、理子に結婚を申し込もうと決めた。

まだほとんど理子のことは知らないが、最初から彼女を気に入っていた。

身体の相性も良く、会話も弾む。彼女となら結婚しても良い関係が築けるはず。

恋心は10年前の恋で最後。

とっくにどこかへ消えてなくなった。理子に抱くのは安らぎと欲望。



会社を出た悠也はタクシーを拾い、白金台へ向かう。

白金台の康子の自宅は悠也が大学卒業まで住んだ家だ。

出来るだけ悠也と過ごそうと、康子は彼のために26年前、自宅兼店舗を建てたのだ。


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