甘い恋の始め方
道路に面した店舗の大きなガラスのショーウインドー。

ウエディングドレスやお色直しに着る華やかなドレスを着たマネキンが数体。

通る人々が見られるようにと、マネキンたちがライトアップされている。

夜は防犯上、シャッターを閉めた方が良いのではないかと悠也は助言したことがあるが、セキュリティは万全だし、通る人々が自分のデザインしたドレスを見て幸せな気持ちになってくれたら嬉しいと夜もそのままなのだ。

康子自身、ウエディングドレスを着たかったのではないだろうかと悠也は思っている。

結婚しなかったのは自分のせい。

血の繋がらない子供を引き取り育てようという大きな心をもつ男がいなかったからだろう。

時折、恋人はいたようだが、結婚までいかない恋だったようだ。

そんな康子は悠也を自分の子供のように育てた。

だから、康子の望みはなんでも叶えてあげたいと、悠也は思っている。

店舗横の白いアーチ形をした門を開けて入り、玄関の鍵を開ける。

康子には今日行くと伝えてあり、リビングで待っていた。


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