甘い恋の始め方
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「ただいま~」
返事のない部屋。理子の声がむなしく響く。
返事がなくても、誰もいない部屋に声をかけてしまうのは引っ越しした時からの癖だ。
悠也との予定がなくなり、結局遅くまで残業してきた。
「さてと! お風呂に入って、パックして、明日の準備をして寝よう」
小さなバスルームに向かおうとすると、スマホが鳴った。
(もしかして、久我副社長?)
ちょっと気持ちが弾み、テーブルに置かれたスマホの画面を見ると「浩太」の名前。
浩太の名前にがっかりする。
悠也と出会う前ならば「好きだ」と言われて嬉しかったかもしれない。
「もしもし?」
『良かった! もう出てくれないのかと思ったよ』
ホッとしたような声だ。
「でも、かけてきても無駄よ? もう会わないから」
(うん。はっきり言った方がいい)
『そんなぁ。理子さん、携帯のことで怒ってるの?』
「そうじゃないの。好きな人がいるから他の男の人と会わないって決めたの」
『好きな人? 両想いじゃなかったの?』
そう聞かれると困る。
これから発展していく恋。今は両想いではない。
「ごめん。もう切るね。彼がこれから来るの」
『ああっ! 理子さ――』
心の中で申し訳ないと思いつつ嘘をつき、終了ボタンをタッチした。
「ただいま~」
返事のない部屋。理子の声がむなしく響く。
返事がなくても、誰もいない部屋に声をかけてしまうのは引っ越しした時からの癖だ。
悠也との予定がなくなり、結局遅くまで残業してきた。
「さてと! お風呂に入って、パックして、明日の準備をして寝よう」
小さなバスルームに向かおうとすると、スマホが鳴った。
(もしかして、久我副社長?)
ちょっと気持ちが弾み、テーブルに置かれたスマホの画面を見ると「浩太」の名前。
浩太の名前にがっかりする。
悠也と出会う前ならば「好きだ」と言われて嬉しかったかもしれない。
「もしもし?」
『良かった! もう出てくれないのかと思ったよ』
ホッとしたような声だ。
「でも、かけてきても無駄よ? もう会わないから」
(うん。はっきり言った方がいい)
『そんなぁ。理子さん、携帯のことで怒ってるの?』
「そうじゃないの。好きな人がいるから他の男の人と会わないって決めたの」
『好きな人? 両想いじゃなかったの?』
そう聞かれると困る。
これから発展していく恋。今は両想いではない。
「ごめん。もう切るね。彼がこれから来るの」
『ああっ! 理子さ――』
心の中で申し訳ないと思いつつ嘘をつき、終了ボタンをタッチした。