ウェディング・チャイム

 私の答えを聞くと、大崎先生は艶やかな笑顔でこう言った。


「その気持ち、素直に甲賀先生へ伝えてください。今は藤田先生が構ってくれないからって拗ねてますよ」

「拗ねてる? まさか」

「確かめてみたらどうですか。私には結構色々語ってくれましたよ。おかげできれいさっぱり諦めもつくっていうくらい」


 そう言いながら大崎先生は、あはは、と大きな声で笑った。


「冗談にされて、うまく受け流されちゃった感じでした。何で告白した私が、恋愛相談されなきゃならないんでしょう?」


 今度は、茶目っ気たっぷりの表情でほっぺを膨らませている。

「甲賀先生ったら、残酷ですよね。でも、言われた通りだなって、ちょっと納得しちゃったんです。見てないようでいて、ものすごく見ていますよね。ただそれが、意中の相手には通用していないのが残念すぎますけど」


 どう返事をしていいものやら、考えあぐねていると……。


「私の実習受け入れと修学旅行が重なってしまって、今ものすごく忙しいというのはわかります。でも、こんな時だからこそ、甲賀先生に優しく接してあげてください。じゃないと……」


 大きな目で、またじろりと睨まれた。


「わかりますね、藤田先生」

「……はい」


 彼女の目を見て、しっかり頷いてから気づいた。

 ……心なしか、潤んでいるように見えることに。

 冗談めかして言っていたけれど、彼女は多分本気でぶつかっていったのだ。

 あの時、どんな話をしていたのか気になるけれど、涙目の彼女にはこれ以上聞けないと思った。


 漫画家志望の実習生は、学校ネタをたっぷり仕入れて実習を終え、六学年団は彼女に振り回されてちょっぴりぎくしゃく。

 修学旅行までには、何とか関係を改善しなくては!

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