ウェディング・チャイム

~油断できない修学旅行~


~油断できない修学旅行~

「早く寝なさい!」

「うわっ! 先生が出た!!」

「人を幽霊みたいに言わないでよ~」

「だって先生、眠れないんだもん」


 廊下にまで響く、ハイテンションな子ども達の声に眉をひそめる。頼むから大騒ぎだけはやめて欲しい。他のお客様のご迷惑になるじゃないの!

 一泊二日の修学旅行の行き先は、旭川市。

 一日目の本日、午前中はほとんど移動時間に費やされ、午後は全国的にも有名になった旭山動物園で楽しく過ごした。

 ゴマフアザラシもペンギンも生き生きとプールの中を泳ぎ回り、子ども達は夢中で観察して記録をとっていた。

 バスに酔う子どもには事前に薬を飲ませて、酔う隙を与えないほどレクを盛り上げる。

 層雲峡温泉のホテルでは、きゃーきゃー恥ずかしがりながらも温泉を堪能したようだし、大満足のまま夜の自由時間も終了。

 大きなアクシデントもなく、無事に夜九時半。

 就寝時間が始まってすぐ、引率団長である校長先生のお部屋に甲賀先生と私、それから教務主任と養護教諭が集まり、今日の反省と明日の打ち合わせ。

 これにて引率団の一日目の勤務時間も無事終了……というのは当然建前。

 ここからが非常に長い。そう、担任は寝ずの番を余儀なくされるのだから!

 修学旅行でホテルを利用する場合、なるべく一般のお客様にご迷惑をお掛けしないよう、低層階のワンフロアに部屋を集めて欲しいと旅行会社にお願いする。

 今回、私達も二階のフロアを貸し切りにさせてもらい、男子をエレベーター向かって右側、女子は左側、そして中間と端に教員の部屋を配置するという布陣。

 男子と女子の部屋を隣にしてしまうと、ベランダ越しに移動しようなどという危険なミッションを遂行しようとする猛者が出ることもあるから。

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