ウェディング・チャイム
こうして、男子の部屋は甲賀先生が見回り、女子の部屋には私が行って……という、引率担任の『残業』が、就寝時間を三時間以上過ぎた十二時半過ぎまで続いた。
「ふぅ、やっと落ち着いた、かな?」
「表面上は、だけどな。今頃こっそりブタメンにポットのお湯注いで『うまっ!』とか言ってるかも知れないぞ」
「あ~、それでみんなおやつにブタメン持って来てるんですか。今時の子ども達は夜食持参で修学旅行を楽しむんですね~」
「ま、それ位は大目に見てやらなきゃな。自分達が子どもの頃だって、先生達は目をつぶってくれたんだろうし」
「そうですね。でも、バスの中で具合が悪くならないように、少しでも寝てくれたらいいんですけれど」
「多分大丈夫。みんな帰りのバスは爆睡だからさ。俺達も含めて」
ふたりで頷きながらこっそり笑う。
お互い、パジャマや温泉の浴衣などを着ている余裕は全くないので、またまたアディダスのジャージで体育座り。
就寝時間を過ぎた廊下は、照明を最小限にしてもらっている。
私達の頭上には非常口の緑色の明かりが灯り、手元に置いてある部屋割り表の紙を照らしていた。
「あの、甲賀先生、今まで私……」
やっと、のんびり話せるだろうと思って、話しかけたその時。
タンチョウヅルの間のドアがそっと開いた。
出てきたのは、紗絵ちゃんと里香ちゃん。暗闇でよく見えないが、二人ともしゃくりあげて泣いているようだった。
「何かあった?」
「先生、私達、どうしたらいいの?」