ウェディング・チャイム

 里香ちゃんがしゃくりあげながら、私に近寄って来た。少し遅れて、紗絵ちゃんも。

 隣に座っている甲賀先生の顔を見たら、そっと頷いてくれたので、見張りをお任せしてこの二人の話を聞こうと思った。


「何をどうしたらいいのかわからないから、まず、話を聞かせて。私の部屋へ行きましょう」


 涙を拭きながら、里香ちゃんと紗絵ちゃんが私の後ろをついてくる。

 部屋の鍵を開けて、彼女達を先に通しながら部屋の電気をつけた。

 フロア貸し切りだったので、引率教員はそれぞれ一人部屋となっているのが、こういう場合、特にありがたい。


「その辺に座ってね」


 布団を囲むように、三人で畳の上に座ると、里香ちゃんが話し出した。


「先生、里香達が先生に相談したっていうのは、みんなに内緒ね」

「もちろん」


 子どもに秘密にするのは当たり前。

 ……あとで学年主任に相談するのは許してね。


「あのね……里香と紗絵と舞花、同じ人が好きなの」

「そう、だったんだ……」

 私は今、初めて聞いたような顔をしたけれど、実は前から知っている。

 この三人は森川稜君の事が好きだと、運動会の頃に気づいていた。

 紗絵ちゃんと舞花ちゃんは元々同じグループだったのだけれど、稜君のこととゲーム機の通信機能でのトラブルが原因で、そのグループから離れている。

 紗絵ちゃんは今、学級委員の里香ちゃん、おっとりとした優等生・のどかちゃん、帰国子女の奈緒美ちゃんと一緒のグループに入っていた。

 ホテルの部屋もこの四人一緒で、就寝時間までは仲良く過ごしていたはずなのだけれど、あれから何があったのだろう。


< 105 / 189 >

この作品をシェア

pagetop