ウェディング・チャイム

 私が苦笑いしていると、里香ちゃんと紗絵ちゃんが不思議そうな顔をした。彼女達は意外とカンが鋭いので、ちょっとでも不審な点があると更なる追求が始まってしまう。


「いや、女子力って言うのは見た目だけじゃなくてね……」

「性格? あ~、それならわかるな~。里香から見たら、先生って可愛い女の子っていうよりお母さんだもん」

「わかるわかる~。私、前に先生のこと間違って『お母さん』って呼びかけちゃった」


 くすくすと笑いながら、二人が顔を見合わせる。この状態なら、部屋へ戻しても大丈夫かな?

 心配なので、もうひとつネタを提供してあげようかな、なんて。


「うん。そうなの。彼からも何度か『もっと頼れ』って言われたよ。でも、何となく素直に頼っちゃったら、今度は自分が何もできないみたいで嫌だなって思ったりしてね……」


 そう言った途端、彼女達はまた顔を見合わせて、頷き合いながらニヤニヤした。


「……ねえ、今の聞いた? もっと頼れ、だって。きゃーっ!」

「それってもう、相手の人は先生のこと、好きなんだよ!!」

「そそそうかな?」

「そうに決まってる!」

「先生、早く告白しちゃいなよ!!」


 いや、上司だから『頼れ』って言うのは当たり前なんだけどね。もちろんそんなことは言えないので、ひたすら二人に冷やかされながら照れる私。


「なんだか、うちらの恋バナより、先生の恋バナの方が面白いよね」

「うん。なんてったって私達よりリアルな感じだもん」

「……はいはい。もう子どもは寝る時間をとっくに過ぎてますよ。早く寝て明日に備えましょうね」


 さっきとは打って変わってにこにこと笑顔を振りまく二人に、こちらはすっかり振り回されてしまったが、何とか部屋へ連れ戻した。

 途中、さっきと同じ場所に座る甲賀先生と目が合い、私の顔を見てにこっと笑ってくれた。多分うまく話がまとまったことがわかったのだろう。


「お疲れ。ちょっとぬるくなったかも知れないけど、一緒に飲もう」


 飲む、と言ってももちろんアルコールではない。

 甲賀先生が栄養ドリンクをくれた。


さっきと同じ場所で待っていてくれた甲賀先生に会釈して、また隣に座る。
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