ウェディング・チャイム
 今回私が選んだ教科は国語。

 ちょうど単元はリレースピーチで、子ども達の活動が中心となり、全員が発表する様子を見てもらうこともできた。

 授業は順調に進み、帰りの会も無事終了。この後PTA総会があり、最後に学級懇談会という流れ。

 この最初の学級懇談会が、担任として第一の難関だと言われている。

 クラス担任としての抱負と、クラスの状況を話す。

 ここまででも十分緊張するというのに、さらなる試練はこの後!

 ……学級PTA役員を決めなくてはならない。

 保護者としても役員は遠慮したいところだと解っているだけに、こちらも無理にお願いすることはできず、毎年どの担任も頭を抱える問題。

 もちろん私も例外ではないのだけれど。

 PTA総会から戻って来た保護者の皆さんを教室へ案内して、お子さんの座席と同じ場所に座ってもらうことにした。

 こうすると、初対面の私も誰の保護者なのかわかりやすいから。

 私も席について、自分で作った懇談資料にそって話し始めると、緊張も少しずつ和らぐ。


 特に質問も出ないまま、ついに学級役員選出タイムとなってしまった。

「まず、学級代表を決めたいのですが、どなたかお願いできませんか?」



 ……教室には三十秒ほど、重い空気と沈黙が流れた。


 ああ、やっぱりこうなるものなのね……。

 覚悟していたものの、実際にこの重苦しい空気を感じると逃げ出したくなる。

 きっとここに集まっている保護者の皆さんも同じだと思うけれど。

 でも、私は担任だから逃げるわけにはいかない。

 とにかくお願いするしかないのだから……。
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