ウェディング・チャイム
10月の行事予定

~大忙しの学習発表会~


10月の行事予定
~大忙しの学習発表会~


「藤田ちゃん、作品展の締切、今週末までだぞ。間に合いそうか?」

「え? そうでしたかっ! どうしよう……大輔君と亜美ちゃんが溶連菌で出停なんです。二人は絵の具がまだ半分しか終わっていません」

「……了解。その二人が飾るスペースだけ空けて、残り全員の作品を先に貼っておこう。担当の先生には、出来上がり次第貼るって伝えておかなきゃな」

「はい……すみません。もうちょっと早く仕上げたら良かったんですね」


 学習発表会に合わせて作品展も行うというのは、よくある光景だと思う。この森が丘小学校もそうなのだけれど、六年生にとってはとてもハードな日程だったりする。

 修学旅行から戻ったらすぐに学習発表会のための劇・歌の練習と作品展示という気合い十分な催しの準備開始。

 小学校の行事の中で大きいのは運動会と学習発表会だけれど、準備の大変さでいえば間違いなく学習発表会の方がずっとハードだ。

 甲賀先生はそのあたりをきちんと計算して、夏休み明けすぐから作品展用の工作とエプロンの制作に取りかかるよう、時間割と教科の単元を組んでくれていた。ところが修学旅行の疲れなどで体調不良になる子どもが増え、寒くなってきたこの時期に溶連菌感染症がうちのクラスで流行……出席停止になる児童が六名もいたのです。

そんな訳で、劇の練習も絵画の締切もかなり厳しい状況の中、頑張っているところなのだけれど。

「作品展は、学習発表会当日までに間に合えば何とかなる。問題は劇だ。今は休んでる子どもの台詞を俺達が喋ってるから何とかなってるけれど、本人が登校してきた時、ちゃんと言えるのか不安だな」

「はい……」

「早く治ることを祈ろう。それと、俺達も体調管理には十分気を付けよう」

「そうですね! こうなっちゃったのは仕方がないので、できる事を頑張ります!」


 そう言った私の顔を見て、甲賀先生は首を横に振った。


「だから、あんまり頑張りすぎるなって言ってるんだ。今日は早く退勤して美味いもの食ってさっさと寝るぞ」

「そうしたいです……でも、まだバック絵が全部出来上がっていなくて……」

「あ~、俺の苦手な分野だ。でも、色塗りだったらやるぞ。いつでも声かけてくれ」

「わかりました。頼りにしていますね」

「まかしとけ! 中学の頃、美術で二を取った腕前をここで披露してやるからな!」

「……そんな自虐的なネタはいいですから、早速塗ってください」

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