ウェディング・チャイム
次の日から、学習発表会特別時間割が始まった。
だいたいどこの学校も、運動会や学習発表会の三週間前くらいになると、特別教室の割り当てなどの調整が必要となるため、この「特別時間割」に添って授業が組まれる。
もちろん、六年生の劇はこれだけの期間では到底足りないため、もっと前から音楽などの時間を利用して練習しているのだけれど。
ちなみに今回六年生が挑戦するのはミュージカル。
選んだのは甲賀先生で、The four seasonsの舞台を実際に観てこの題材に決めたのだった。
「では、CからEまで歌います。この音です」
音楽室のグランドピアノで、出だしの音を大きめに鳴らす。それから。
「いちにのさん、はいっ!」
簡易伴奏をつけながら、六年生全員を指導するのは私の役目。
甲賀先生はピアノが不得意だそうで、自分の学級で音楽を指導するときはギターを使っている。
私も簡易伴奏が弾ける程度の腕前なので、音楽専攻の先生のように弾きながら話して指導するなどということは無理。
本当はCDを使いたいけれど、劇の時間の都合もあり、削除しているフレーズもあるため、それができない。
弾きながら必死に子ども達の歌声を聴いて、後でどう指導しようかと考えているうちに。
……間違った。あああ、ここで伴奏が止まると歌も止まってしまってもうボロボロ。
「ごめんね、みんな……」
指導より先に、歌いにくい伴奏となってしまったことを謝った。
教室の後ろの方で机間指導している甲賀先生も視界に入ったけれど、直視できなかった。
もうちょっとピアノの練習をしておくべきだったと後悔したけれど、もう遅い。
結局その日の歌の練習は、主旋律を弾くだけで子ども達に頑張ってもらうことに。
本番、こんなんでどうしたらいいんだろう……。