ウェディング・チャイム
 一番重要な学級代表が決まったので、他の役員も比較的スムーズに決めることができた。

 フルタイム勤務の森川さんが代表、ということで、保護者の負担にならないように無理のない活動を目指そう、という話になったのも良かったと思う。

 こうして、懇談会も無事に終わり、心の中でガッツポーズをした。

 机の位置を戻しながら、森川さんにもう一度お礼を言うと。

「先生も大変ですよね。実は私の弟も教員で、PTA役員が決まらなくて大変だってぼやいてたんですよ。何だか、先生の困ってる様子が弟と重なっちゃって。あ、大変! これから下の子の懇談会に行ってきます。先生、どうぞ頑張ってくださいね!」

 優しく微笑まれて、励ましてくれた。

『どんな学校でも、こちらが一生懸命頑張れば、応援してくれる保護者は必ずいる』

 母校の教育大学でゼミの先生から何度も聞いた言葉だったけれど、それが事実であることを実感するひとときだった。


 机を全て元通りに並べて、保護者の皆さんも全員教室から出た。

 どうやら一組も懇談会が終わったようなので、私も職員室へ戻ろうと廊下へ出た時。


「先生、ちょっといい?」

 教室前の廊下に残っていた保護者から声をかけられた。

 とても小学六年生のお母さんには思えない程、見た目もファッションも若いこの方は、誰の保護者だったっけ?

「はい、どうされましたか? ええと……すみません、お名前を教えてください」

「新山です。先生、うちの健太っていつも授業中あんな感じだったの?」

 新山健太(にいやまけんた)君のお母さんだったのね。そういえば目元がよく似ている。

「健太君の授業態度ですか……?」

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