ウェディング・チャイム

 それというのも、クラスの女子の間でSNSによる仲間はずれが行われているらしいと、PTA役員の森川さんからこっそり情報提供があったのだ。

 今時の子ども達はかなりの割合でスマホを持っている。個人所有のスマホはなくても、家族で共有のタブレットなどを自由に使うことが可能な家庭もかなりの割合だ。

 先日、うちのクラスでアンケートを取ったところ、ネットに接続できる端末を持っている子どもが95%、実際に接続してSNSやメール、動画再生などで活用している子どもも何と8割。

 正直なところ、放課後のネット交流など私達には全くわからない。ただ、家庭訪問で相談を受けていた紗絵ちゃんの事は、ずっと気になっていた。

 そしてやはり、紗絵ちゃんはスマホでのSNSでも、自分だけが外されたグループで悪口を言われていると、そう思っているらしい。

紗絵ちゃんは、あの恋バナで盛り上がった修学旅行以降、ライバルでもある里香ちゃんとずっと仲良く行動していた。

 里香ちゃんからいい影響を与えられたらしく、それまでごく普通の成績だった紗絵ちゃんは、漢字の小テストで満点を連発するようになったり、苦手な算数も八割~九割の得点が取れたりするようになった。

 すると、ますます面白くないのが、同じくライバルの舞花ちゃんと、彼女にべったりくっついている奈々ちゃん。

 以前からゲーム機の通信機能で紗絵ちゃんの悪口を言っていたらしいけれど、今はそれがSNSで行われているとのこと。


 紗絵ちゃんのお母さんと森川稜君のお母さんは、保育園時代からのママ友で、そういった相談を今もよくしているらしい。

 最近の紗絵ちゃんは元気がなく、学校へ行きたがらない時もあるけれど、何とか休まずに登校しているのは、稜君と会えるから、らしい。

 紗絵ちゃん自身は、私へそういった相談を持ち掛けてくることがないし、児童とはいえ他人のSNSの中身まで把握できないため、どうすればいいのかと悩んでいた。

 甲賀先生だったら、こういう場面でどう対応するのかな。


 相談したい。でも、今はそれどころじゃなさそうな甲賀先生に、これ以上迷惑をかけるのはやめようと思った。
 
 
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