ウェディング・チャイム
12月の行事予定
~忘れられない忘年会~
「やっと終わった~!!」
「くそ~、負けた。今度こそ早く終わらせて藤田ちゃんを煽ってやろうと思ってたのに!」
「ダメですよ~。のにがつくと愚痴になるんですから」
「悔しいから誤字脱字徹底的にチェックしてやる!」
「……お願いします」
学期末恒例の通知表が出来上がり、開放感いっぱいの私。
今回はちゃんと自分の言葉で所見を書いたし、怪しいところは公用語辞典でチェックしておいたから多分大丈夫だと思うけれど……。
「早速発見。藤田ちゃん、これ、砂消しで削っておくこと。担任印のところに保護者が印鑑押してるぞ」
「えっ? あああ~、浦野さん、ここ、私がハンコ押す欄ですよ~」
「それからここ、希望を『持つ』って書いてるけど、手で持てない抽象的なものは基本、平仮名で『もつ』って表記するぞ」
「あ~、またやっちゃいましたか……気をつけます」
「よし、今度からは、間違い一つにつき、煎餅一枚もらおう」
「そんな安上がりなものでいいんですか?」
「ホントはもっと欲しいものがあるけどさ、やめとくよ」
「何ですか?」
「ん~、今ならエナジードリンク。でも、この調子でいったら、カフェイン中毒にされて倒れそうだし」
「そこまで間違ってませんってば!」
そんな会話を繰り返しながら、並んで仕事を続ける。
こうやって仕事ができるのもあと三カ月。
高学年の島で四人仲良く声を掛け合って、助け合って。
子ども達はよく、まだ小学生でいたい、このクラスから卒業したくない、なんて言っているけれど、私もまだこの学年から卒業したくない。
ずっとこのままでいられたらいいのに。
通知表の提出も無事に終わり、冬休みの宿題も甲賀先生と手分けして印刷を終えた。
あとは、ドリルとしてまとめるための丁合(ちょうあい)作業が残っているだけ。
子ども達が自分でやると、時間がかかる上に授業時数がもったいないということから、私達でやってしまおうということになった。
「じゃあ俺の教室で」
「わかりました。準備します」
「俺が算数と表紙とホチキス持つから、国語と裏表紙を頼む」
「はい! 暖房スイッチ入れておきますね」
二人とも両腕にプリントを山ほど抱えて、教室のある三階へ向かった。