ウェディング・チャイム

「やったな美紅! ボーゲンはだいたいマスターできた!」

「はいっ! これも甲賀先生のお蔭です!」


『スキー合宿』二日目の午後、私は初心者コースの頂上から一度も転ばずに滑り降りられるようになった。


「次はシュテムターンをもうちょっと練習して、上手くなったらパラレルに挑戦しよう」

「シュテムターン、ですか?」

「ボーゲンのまま、左右どちらかに重心を移動させたら、勝手に曲がっていくだろ? それのことだよ」

「そういえば、勝手に曲がってました」

「これが上手にできるようになったら、今度は足を揃えてターンするんだ。そうすればパラレルの完成」

「……説明は簡単ですけど、やってみたら難しいんですよね」

「まあ、そうだけど。習うより慣れろだ。大事なことだから二回言ったぞ」


 ボーゲンから直滑降、そしてパラレル。

 少しずつ上達していくのがわかってきて、楽しいと感じられるようになった。


「美紅、ブレーキが上手いよな」

「えへへ、そうですか? 二の字ストップはスケートで何度もやってますからね」

「その二の字ストップを左右交互にやれば、パラレルも楽勝だ」

「あ、言われてみればそうかも! やってみます!」


 両ひざが離れてしまわないよう、腰を落として、足を平行にする。それを交互に素早く……。

 できた!

「どうですか甲賀先生! もう、これでスキー授業も怖くないですよ!」

「良かったな。二日間で目標達成とは、上達が早くてびっくりだ」

「ふふふ。スケートとスキー、両方できる人って北海道内でもそんなにいませんからね。今なら全道どこへ異動してもやっていけますよ」



 こうして、パラレルの感覚が掴めたあとは、中級者コースも軽くクリアできた。

 上級者コースは「また今度」と甲賀先生に止められたので、昨日より早めにスキー場をあとにした。


< 169 / 189 >

この作品をシェア

pagetop