ウェディング・チャイム
それを聞いた新山さんも吹き出しそうな顔をしていて、顔を見合わせた私達は思わず一緒にくすくすと笑ってしまう。
甲賀先生の軽口のおかげで、一瞬にしてその場の空気が和んだ。
……でもきっと、後でお母さん達のネタにされますよ、甲賀先生。
「それでも、教員として採用されてから十年間、子ども達の事を学び、一緒に成長させてもらいました。親としてのキャリアはありませんが、今までのべ五百人以上の児童・生徒と関わってきています。その経験を通して、保護者とはまた違った視点で、お子さんの良いところを伸ばしていけたら、と考えています」
甲賀先生は、私と新山さんの両方に向かって語りかけている。
私に対するメッセージにも聞こえるこの言葉の意味は、もしかしてこういうこと?
『親になれなくても教員にはなれる。その分、現場で修行して、保護者と協力しながら頑張れ!』
……そうだとしたら、甲賀先生って実はいい人なのかも知れない。
そしてまた、私の顔をちらりと見てから新山さんに話しはじめた。
「色々と至らない点もあるかも知れませんが、まだ経験の浅い藤田もお子さんと一緒に成長できるよう、見守って頂けるとありがたいです。ご理解とご協力をよろしくお願い致します」
甲賀先生と一緒に、私も頭を下げた。すると。
「こちらこそ、ちょっと誤解しちゃったみたいで。うちの子のこと、よろしくお願いします」
新山さんもさっきとは違い、にこやかにお辞儀をしてくれた。