ウェディング・チャイム
 玄関まで新山さんをお見送りした後、職員室で甲賀先生とコーヒーを飲みながら話を聞いてもらうことに。

「ご苦労様。どうだった、最初の参観日と懇談会は?」

「お陰様で参観授業と懇談会は割とスムーズに進んだと思います。学級PTA役員も森川さんが代表を引き受けてくださったので、その後全員決まりましたし」

「あー、森川さんね。俺の中学時代のダチの姉さんなんだ」

「そういえば、弟さんが教員だって言ってました!」

「あいつは高校の教員だけどね。今、海外派遣でパラオにいるって聞いたよ」

「パラオですか! 地上の楽園って言われてますよね。お金貯めていつか行ってみたいなぁ」

 去年、友達と行ったグァムも良かったなぁ。

 でも日本人観光客ばかりで、ちょっとごちゃごちゃしていたから、今度はもうちょっと落ち着いてバカンスできるところに行きたいと思っていたんだけど、パラオってどの位の予算と日程で行けるのかな……。

「おーい、もしかしたら脳内トリップでパラオに行っちゃったか?」

「あ、すいません。つい、旅行に行きたいな~、なんて頭の中で旅程表作りそうになりました」

 私がそう言った途端、甲賀先生はすました顔をしてこう言い放った。

「そんなに旅程表作りたいなら、修学旅行の時に作らせてやるよ。嬉しいだろ?」

「えっ!? いや、修学旅行の旅程表なんて作ったことないですし!」

「誰だってみんな最初はそうだよ。何事も経験だぞ~」

「……わかりました。甲賀先生って本当に仕事振るのがお上手ですよね」

「まあね、今年は特に藤田ちゃんに頑張ってもらうつもりだからさ」

「えええっ! 新人なので、お手柔らかにお願いしますよ~」

「考えとく。それより、さっきの新山さんの話だけどさ」

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