ウェディング・チャイム
チャイムが鳴り終わるのを待って、また、静かに話し始める。
「最後に、私事ではありますが、ひとつお知らせがあります」
そう言った途端、奈々ちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
今まで、秘密を守ってくれてありがとう、という気持ちをこめて、私も笑いかける。
「先日、三月十四日に結婚しました」
「ええええええーーーーーー!」
「うそ!」
「だれと?」
隣のクラスからも、同じような叫びが聞こえてきた。
だから、隣もうちのクラスも静かになったタイミングで伝える。
「お相手は、甲賀新さんといいます。隣のクラスで教員をしています」
「きゃあああああーーーーー!」
「わああああーーーー!!!!」
「うそでしょーーーーーー?」
「マジでええええーーーーー?」
「本当です。明日から新婚旅行へ行きます。どうか皆さん、私達を温かく見守ってください。そして私達も、皆さんの幸せを心から祈っています。ありがとうございました」
深々とお辞儀をすると、自然に拍手が沸き起こった。それは、隣のクラスも一緒だったらしく。
廊下へ並んだ時、子ども達みんなに冷やかされたけれど、それも隣のクラスと一緒。
前を歩く甲賀先生が一瞬振り向いた時、『参ったよ、まったく』という声が聞こえたような気がした。
甲賀先生が教えてくれた通り、最高にやりがいのある、素敵な一年を過ごせたという、自信と達成感を感じながら、ゆっくり歩き出す。
最後の日に、一緒に笑うことを目標としていたけれど、まさかこんなにみんなが笑顔になる卒業式が迎えられるなんて。
在校生のお見送りの列からも、卒業おめでとうございますの声と共に、結婚おめでとうございますという言葉がかけられた。
どうやら、外へ並んでいる間に、伝えられたらしい。
足元には雪が残り、まだまだ春が遠い北の大地だけど。
隣の学年主任と、どこまでも一緒の幸せを味わって。
大好きな夫といつまでも笑顔でいられる。
素晴らしい門出となったのでした。
ウェディング・チャイム 【完】