ウェディング・チャイム
 
 そうだった……あれはやっぱり、私の話の仕方に問題があったんだよね……。

 甲賀先生にフォローしてもらったおかげで、穏便に済ませることができたけれど。

「すみません、早起きの話だけにしておけば良かったのに、朝ご飯の話までうっかりしちゃったせいで……」

「藤田ちゃんが言った事は、別に間違ってはいないさ。今は文科省が『早寝早起き朝ご飯』を推進してるんだし、この三つのうち、どれかひとつでも欠けていたら生活のリズムが崩れる。……そういう俺も夜更かしと朝飯抜きが当たり前だよ、実は」

 そう言って、あははと笑いながら話を続ける。

「朝飯を作ってもらえる奴って幸せだよな」

 私の顔を見て、同意を求めるようにそんなことを言うのは、お互い一人暮らしだから、かも。

「ただ、普段必死に頑張っているお母さんであるほど、実際には不安を抱えていることが多い。きっと新山さんは、藤田ちゃんから『だらしのないお母さん』だと思われていると勘違いしてしまったんだろうな。ちょっとした言葉の行き違いって奴だけど、これで信頼関係が崩れたら悲しい、そうだろ?」

「おっしゃる通りです……」

「よくあることだけど、今後お互いに気を付けよう。以上、反省会終了って事で。他に何か言っておきたいこと、聞きたいことはあるか?」

 聞きたいことで思い出した! 子ども達から甲賀先生の趣味を聞いておくように言われてたっけ。

「それでは遠慮なく」

「どうぞどうぞ」

 真剣な顔で聞かれたので、私も真剣に聞いた。

「甲賀先生、ご趣味は?」
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