ウェディング・チャイム

 やっぱり『彼女』はウケ狙いの趣味だったのかな?

「え、ホントは何ですか?」

「そのうちわかると思うよ。それより、藤田ちゃんの趣味は何だ?」

「私ですか? えっと、子ども達と遊ぶこと、かな?」

 大好きな子ども達と関わることができるから、この仕事を選んだ。

 大変なことも多いけれど、子ども達と思いっきり遊んで一緒に笑える日々はとても充実しているから。

「なるほど、教員としては模範的な回答だな。これからキャリアを積んでも、その気持ちを忘れないで欲しいよ。でもさ、いずれは親としてのキャリアも積みたいだろう、藤田ちゃんも」

――子どものいない先生に、親の気持ちなんて解る訳ない。

 さっきの新山さんの言葉は、かなりずしんときた。

 こればかりはどうすることもできず、私は何も言えなくなってしまった。

 親としての経験どころか、結婚すらしていない、社会経験の少ない私に大事なわが子を預けなくてはならない保護者の気持ちを考えると、頼りないと思われても仕方がない。

 せめて、経験がない分、愛情と熱意でカバーしたい。

 もっともっと勉強しなくちゃって、日々痛感している私だけれど……。

「そうですね。血のつながらない子ども達だってこんなに可愛いんですから、わが子ってどれだけ可愛いんだろうって想像したら……」

「だよな。俺達もいつか親になれる日が来るといいな」

「でも、その前にまず結婚しなきゃダメじゃないですか」

「そこが問題なんだよ。できちゃった婚はまだまだタブーだもんな、この業界」

「やっぱり、ダメなんですか?」
< 21 / 189 >

この作品をシェア

pagetop