ウェディング・チャイム

「なるほど~。参考になります!」

 私が深く頷くと、甲賀先生はさらに話を続けた。

「それでもお茶菓子を出そうとしてくれる保護者がいるから、もう一言通信に加えるんだけどな。『ダイエット中なので、誘惑しないでください』ってね」

 ……通信でダイエット中だと宣言すること自体、結構ハードルが高いような気がしますけれど……。

「ダイエットですか。でも、甲賀先生はダイエットの必要ないですよね?」

 身長が高くて肩幅も広い。

 でも、無駄なお肉はなさそうな体型。

 多分腹筋が割れてたり、鎖骨から上腕にかけてはきっと理想的なラインを保っているんじゃないだろうか。

 もちろん、Tシャツ姿までしか見たことがないから、あくまでも想像だけど。

 絶対にいい身体だと想像できる……って、勤務中に何を想像してるんだ私!

「そこはほら、俺ももう三十路だから。若い頃とは代謝が違うんですよね~、なんて話をお母さんとすれば、お互いに通じるものがある訳だ。ダイエットネタで盛り上がることもあるぞ」

「その場面、すっごく想像できます」

「藤田ちゃんの場合は、女性だからもっと盛り上がれるぞきっと。……俺としてはあんまりダイエットして欲しくないけど」

「でも、このままの調子であと一週間もお茶菓子出されたら、絶対に太っちゃいます!」

「慣れない仕事で疲れている時にダイエットもしたら、体調を崩すぞ。大丈夫、運動会練習で、嫌でもハードなトレーニングができるからさ。それに、藤田ちゃんはそのままで十分いいと思うよ。これ以上縮んだら子どもに紛れて探すのが大変になる」

 失礼なっ! 確かに学級写真を撮っても、一瞬自分がどこに写っているのかわからなくなるし、この間の避難訓練では、教頭先生に児童と間違われて誘導されたけど。

「一応そこは気にしてるんですよ……」

< 25 / 189 >

この作品をシェア

pagetop