ウェディング・チャイム
「えええっ! すいません! じゃあ、私が残ってたせいで、カギが閉められなくて甲賀先生まで残る羽目になっちゃったんですね?」
「いいよ、どうせ仕事はいっぱいあるから。おかげで今日は持ち帰らなくても済みそうだし。藤田ちゃんが一生懸命仕事してるのに、俺だけ先に帰ってひとりぼっちでここに残すなんてできないさ。それに、カギの締め方知らないよな?」
そういえば、学校に最後まで残っていたのは初めてだった。
小学校は今、機械警備化が進んでいて夜警さんもいない。
だから最後に帰る教員が機械警備をセットすることになっているけれど、その方法を私は当然知らなかった。
甲賀先生は職員室のパソコン関係の電源を落としてから電気を消して、ドアのカギを閉めた。
職員玄関近くにある機械にカードを差し込んで、機械警備を作動させるらしい。
ランプの色が変わって、音声でセット完了を知らせてくれた。
「機械が作動してからは、もうこれより奥へ入れない。動くものに反応して、ベルが鳴って警備会社へ通報されるんだ。去年、夜中に警報が鳴って調べてみたら、犯人は大きめの蛾がたった一匹、センサーの周りを飛んでただけだったってさ」
「そんなものにまで反応するんですか!」
「そういうこと。だから学校に忍び込むなんて無謀だぞ」
「しませんよ、そんなこと!」
相変わらずの軽口をたたきながらも、甲賀先生は機械が作動していることをしっかり確認していた。
それから二人揃って職員玄関へ行き、外からカギをかけて、職員駐車場へ向かう。
児童玄関を通り過ぎて、校舎とグラウンドの間にある通路を二人で並んで歩く。