ウェディング・チャイム
外は真っ暗で、校舎の電気も消えているこの辺りは、結構不気味な雰囲気。
「藤田ちゃん、この辺り、実は霊の通り道だっていう話だぞ」
「な、なんで今、そんな怖い話をするんですかっ!」
「いや、怖い話をするには絶好のシチュエーションかな~と思って」
「甲賀先生、私を怖がらせて楽しいですか……」
「楽しいっていうか、藤田ちゃんの反応はいつも面白いっていうか。古い学校ってもともと霊が集まりやすい上に、ここは小樽市内の墓地を結んだ線上にあるらしくてさ。別々の墓地に埋葬された恋人達と子どもの霊が……」
「わああああ~っ! もういいです! 私、怖い話はダメですからっ!!」
「そうか、残念だな。でも、藤田ちゃんの弱点がひとつわかったからよしとしよう」
そんな話をしているうちに、駐車場へ着いた。
本当に怖かったので、ちょっと離れたところに停めてある私の車までついてきてくれたのはありがたかった。
怪談以外の話をしてくれたのであれば、もっとありがたかったけれど。
「今日はありがとうございました。遅くまで付き合って頂いてすみません」
「気にすんなって。腹減ったし、本当は一緒に飯食いに行きたいところだけれど、藤田ちゃんは疲れてるだろ。また今度余裕のある時にしよう。それじゃあ、お疲れ」
「お疲れ様でした」
甲賀先生は結局、私が車に乗り込んで駐車場を出るまで見送ってくれた。
何だかんだ言いながら、最後まで面倒を見てくれていたことを知り、少し反省した。
仕事に夢中になって、周りが全然見えていなかった自分と、それを責めずに、一緒に残ってくれる学年主任。
いつか、甲賀先生と対等に働けるくらい、仕事のデキる女になれたらいいのだけれど。
そういえば、さっきさりげなくご飯に誘ってもらったような。
あれは社交辞令? それとも本気……?