ウェディング・チャイム
向かい側でそれを聞いている、五年生担任の八木先生や渋谷先生も時々その会話に加わりながら、みんなで私をサポートしてくれている。
高学年部会の四人は、みんな穏やかで仲がいい。
「ええと、次は……池田さんからなんですけれど、ゲームソフトの貸し借りでちょっとトラブルがあったみたいです。池田悠馬君のソフトを坂本俊樹君に貸したら、セーブデータが消去された状態で返されたらしくて。悠馬君と俊樹君、今ケンカの真っ最中だって言ってました」
「そんなに大事なソフトだったら貸すなよ、全く!」
「それで、学校でも指導してくださいって言われたんですけれど……」
「四月に学校からのプリントで、お金や高価なものの貸し借りはやめましょうって出したぞ」
「私もそう伝えましたけれど、よく読んでいなかったみたいです」
高学年の先生方、みんなでため息をついた。
「悪いけど、放課後の個人的な貸し借りまで全て学校で管理することはできない。二人ともいい勉強になったと思って、今後大事なものの貸し借りはやめましょう、程度の事しか言えないよな……どうです、八木先生?」
「そうですね。学校は個人の持ち物にまでチェックを入れることができませんから。あとはその二人が仲直りできるように、さりげなくサポートする位ですね」
「はい……そうします」
はあああ、とまたため息をつきながら、メモを眺めていたら。
「ま、あんまり思いつめるなよ。この時期が一番心の病になりやすいらしいからさ。何かあったらちゃんと高学年部会で対応してやる。まずはこの渋谷ちゃんがサンドバッグになってくれるってさ」
甲賀先生が、五年二組担任の渋谷先生に向けて、何やら意味ありげにニヤニヤしている。